-新しい質問とそれに対する回答 -
(2005/08/11)
Q:絵は全てNが描いていたのではないのか?
A:違います。前述のとおり、弊社では漫画制作でもプロダクション制度をとっています。当然、背景・キャラクター問わず、絵も複数のスタッフが分業で描いています。
-『鋼鉄の少女たち』連載終了の質問へご返答とおわび
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(2005/08/09)
連載終了後、いくつか質問メールが届いていますので、この場を借りてご返答させていただきたく思います。
Q:なぜ、漫画『鋼鉄の少女たち』は連載を終了してしまったのですか?
A:雑誌の刊行終了に伴う、連載の終了です。
新雑誌への連載のお話や単行本への書き下ろしのお話もありましたが、事情をかんがみて、読者諸氏に納得いただけるだけのクオリティを維持しての作品制作続行は困難であると判断し、いったん制作中止となりました。
Q:続編が描かれない(制作中止の)経緯を教えてください。
A:『鋼鉄の少女たち』は、弊社内での完全分業によるプロダクション的集団作業によって制作されていました。
しかし、2D作画を担当していたNが弊社内でトラブルを起こし始めたことから、制作中止に至るまでの問題が発生します。
経緯を時間軸を追って説明します。
長文になってしまいますが、ご容赦ください。
まず、2003年末。Nによる社内書類のすり替え行為や、弊社の特許庁への登録先を無断でN個人の自宅住所に登録するといったトラブルが発生します。
この結果、弊社としてはNをそのまま継続して雇用することは困難と判断せざるを得ませんでした。
しかし、当時はNが当作品の外部担当窓口であったため、取引企業側の担当編集氏との間に個人的な人間関係が生じていました。結果、担当編集氏は、取引企業側としてNの連続起用に強い要求を出してきました。
そのため、弊社としては彼を外注扱いとし、お互いの同意の上、著作権などの諸権利に関しては弊社が管理する契約を結び、引き続き制作に参加させることとなりました
ただ、当然ながらこの状況での制作続行は望ましくない為、連載の早期終了を目指した作品展開を目指すこととなりました。
そこから約1年後の2004年10月8日、連載終了に向けて最終2話分のラストスパートをかけている最中、次のトラブルが発生しました。
原作やキャラクター管理など、ディレクターとして取り仕切っていた、弊社社長の手塚の奥さんが、自宅付近において何者かに頭部を強打され、脳挫傷で入院するという事態となったのです。(犯人はいまだに不明です)
当然のことながら手塚は奥さんの看病と介護に当たらざるを得なくなり、制作に関しての時間を削らざるを得ませんでした。
また、殴打事件と同月同日付で、Nより内容証明郵便において、弊社との契約続行を打ち切りたい旨の一方的な通知がありました。これに至るまでの話し合いが一切行なわれていない状態での、突然の通知です。
このような状況下での制作続行は困難だと判断し、担当編集氏に制作の一時休止を求めました。
しかし、またもや担当編集氏からの強い連載続行の要望があったため、時間的な制約から、弊社にとって不利な条件でNと合意を結ぶこととなります。
ただし、著作権をはじめとした諸権利に関しては、弊社のものとすることができました。私たちが著作者であるからには、当然ながら作品に対してクオリティを管理する権利があります。
なお、手塚が不在がちとなったため、これ以降の当作品社内担当は、私橋本が務めることになります。
しかしながら、2004年11月。実際に作品が出来上がってみると、弊社での原稿チェックどころか連絡も何も無い状態で、いきなり雑誌への掲載が独断で実行されてしまいました。出荷後では、残念ながらクオリティ管理のしようがありません。
その上、後2回の連載の予定が、弊社への何の連絡も無いまま雑誌終了が1回早まり、『続きは単行本で』とのコメントを勝手に入れられた状態での、不完全な連載終了となっていました。
そして、実際に掲載された作品ですが、残念ながら弊社の納得のいくクオリティには程遠いものでした。
弊社としては単行本でこれを修正する必要を強く感じておりましたが、Nはこれを拒否。
それどころか、5巻収録予定部分の他のパートまで、N側の視点に基づいた全修正の権利を要求してきました。
これは、元の契約はおろか、弊社にとって不利な新しいNとの合意に基づいて考えても、明らかに準拠しない要求です。
当然、弊社としてはこれを認めることはできません。
そのため、弊社はNに代わるスタッフの起用を模索し始めました。クオリティ的にも絵柄的にも、時間さえあれば他のスタッフでも充分に対応は可能ではあったのです。
しかし、これについては取引先担当氏が強硬にスタッフの交代を拒否。
それどころか、単行本5巻の刊行とその分のロイヤリティの弊社への支払いと引き換えに、弊社保有権利をNに無償譲渡する旨を要求してきました。
弊社は決して大きな企業ではないため、単行本5巻のロイヤリティ収入は決して無視できるものではありません。
特に、漫画は連載時には赤字で、単行本売り上げで黒字に転換する ビジネスモデルを構築しているため、すでにほぼ7割を完成させた制作物が収入を生まなくなることで、金銭的には非常に大きなダメージが発生します。
また、たとえ多少のクオリティの劣化があっても、『鋼鉄の少女たち』は 利益を生むことができる作品へと成長していました。私たちが執筆した作品と、Nが勝手に作成・変造した作品との違いに気づかずに購読を続ける読者も居るには違いないのです。
金銭的には従来のままでも良いとの話をした担当編集氏も、できうる範囲で弊社に気を使ってくれていたものと思います。
しかしながら、この問題は既に金銭的にどうこうという問題を逸脱しています。
最初にも話しましたが、『鋼鉄の少女たち』は社内の共同作業によって制作された作品です。
弊社の機材を使用し、原作シナリオやクオリティチェックを担当していた手塚をはじめ、弊社スタッフの様々な力があって、ようやく成り立っていたものです。
そうした積み重ねの結果にようやくたどり着いた最終回間際になって、スタッフたちの全ての努力を、一個人が奪い取るような行為が許されてよいものでしょうか?
しかも、スタッフ個人の家庭の事情に付け込むかのようなタイミングで、です。
今回のような一人のメンバーによる独断専行を許してしまうことは、会社組織として社内外のスタッフの連携に致命的な悪影響が出る上、ジャンルを問わず、弊社と同じように共同作業で創作活動をしている人達に対しても、個人の暴走が許容されることもありうるのだという、悪しき前例となってしまいます。
そのような状態で、私たちが、この作品のクオリティ管理も何もかもを放り出して、ただお金だけを貰うことができるでしょうか?
弊社としては、仮に単行本刊行が止められることになったとしても、そうしたことだけは認めることはできないとの判断に至りました。
この後、担当編集氏と私との間で電話での話し合いを行ないましたが、担当編集氏の言葉には、先の雑誌休刊の前倒しを弊社に連絡しなかったことに対するコメントも特に無く、ただ単行本刊行中止を盾にするだけの、全く誠意の感じられないものであったため、担当編集氏との打ち合わせ継続を断念しました。
こうして、2004年12月末、単行本刊行が無期延期とされました。
以上が経緯となります。
Q:なぜ、単行本の情報が遅れているのですか?
A:これは、弊社手塚の個人的理由に配慮してのことです。
手塚の奥さんの容態は当初良くない状態が続いており、記憶の著しい混乱がありました。
怪我自体は比較的早期に回復し、殴打から2ヶ月後には社会復帰をしていますが、記憶の混乱と社会的騒音からの脆弱性に関しては、そう簡単に克服できるものではありません。
そのため、彼の家庭を安静に保つべく、弊社を通した形での情報の公開は、 出来る限り伏せることにしていました。
今回こうした発表を行ったのは、奥さんの容態が比較的安定してきたことによるものです。
ご報告が遅れましたことをお詫び申し上げます。
なお、順調に回復しつつあるとはいえ、まだ完治したわけではありません。事件当日の記憶もまだあいまいのままで、そのため、犯人逮捕へとは踏み切れていない状態です。手塚の周囲に関しては、なるべく平穏を与えてくださると幸いです。
現在も彼は通院の手伝いなどもあり、クリエイターとしての業務に関しては、 まだまだ不完全な状態です。担当の医者によると、来年3月頃にはほぼ問題は無くなるはずだとの話ですので、完全復帰はそれ以降になると思われます。
Q:今後、続編などは描かれないのですか?
A:Nや担当編集氏との方針の違いにより、ストーリーを大幅に変えざるを得なかった場所が、後半数話に多数あります。
弊社としては、こうした不本意な部分を本来の形に修正のうえ、再度別の形で出版できればと考えています。
漫画にこだわらず、ゲームや小説、その他の形式を取るかもしれません。
しかし当面、少なくとも手塚の完全復帰までは保留したいと考えています。
今回のような騒動に至ってしまいましたことを、『鋼鉄の少女たち』をこれまで支持していただいた皆様に、著作者として深くお詫びいたします。
今回の件を教訓として、よりよい作品の制作に力を入れていく所存です。
今後ともアイラ・ラボラトリを、どうかよろしくお願いいたします。
2005年8月9日
有限会社アイラ・ラボラトリ
取締役副社長
橋本修平(hashi@aera.co.jp)