SIGGRAPH突撃日記


■2005年08月18日(木) ☆3ds max8 SIGGRAPH2005レビュー


アセットマネージメント機能が内包された


ペルトマッピング機能は、その名のとおりなめし皮のようにUVWを開く


標準ボーンでもモーションミックスが可能となった


Character Studioも、オイラーXYZによるカーブコントロールに対応した


maxスクリプトに、デバッガか搭載された

 ユーザー会やAutodeskブースでのお話などを元に、2005年冬発売予定の”3ds max8”についてのレビューを作成しました。

●サブスクリプション公約の堅持
 Autodesk社のサブスクリプション制度は1年単位の再契約システムであり、これがmaxを支える安定ユーザーの基盤となっている。そうした安定ユーザーの支持に答えるため、必ず1年に1回SIGGRAPHにおいてメジャーバージョンアップをするというサブスクリプション公約が存在するが、これが今年も守られている。
 ただし、たった1年の短期間では基本プログラムから全て書き換えというわけには行かず、max8の基本機能に限って言えば、max6の流れを踏襲したものとなっている。そのため、最近ハイエンドソフトウェアで流行の”オブジェクトの不破壊”などの最新機能が搭載されない。しかし、そうした最近機能には対応していない代わりに、すでにこなれたソフトウェアとして、実制作作業上の安定性はきわめて高いものとなる予定である。

●Autodesk Vault の搭載
 Autodesk社のCAD系ソフトウェアに搭載されてきたアセットマネージャ”Autodesk Vault”がmaxにも搭載されることになった。もちろん、このソフトウェアは他のAutodesk製品同様、maxでも無料で提供される。従来のCGムービー管理ソフトの単価が数百万円からであったことを考えると、CAD系のソフトウェアからの流用とはいえ、非常に安価に導入ができるプロジェクトマネージメントソフトだということが出来るだろう。
 ”Vault”には、maxファイルの閲覧機能だけでなく、様々な形式に対応したビューワーなども含んでおり、ネットワークを介した非常にフレキシブルなプロジェクト管理をすることができる。
 もちろん、”ファイルのチェックイン/アウト”機能などにより、ユーザーの誤操作によるデータベースの消去やクラッシュ、急な仕様変更にも対応しており、シーンファイル中に含まれる素材の一部だけの変更などにも対応している。複数シーンを組み合わせてのシーン作りも、従来のmax標準の”参照ファイル”機能よりもスムーズに行うことができる。

●UVWアンラップの強化
 オブジェクトにテクスチャマップの切断面を直接描き、それを基にして自動でUVWマップを展開する”UVペルト マッピング(革なめしマッピング)”機能が搭載された。
 もちろん、今回からはUVWテクスチャマップの書き出しにも対応し”ユーザーをプリントスクリーンボタンから解放”した。
 UVWアンラップの作業においては、メッシュが交差している部分の処理が厄介だが、このバージョンからは、メッシュの交差を自動的に検出する機能も搭載した。
 大幅に作業能率が上がったといえるだろう。

●コントロール+リムーブ
 細かい部分だが、モデリング機能も一部バージョンアップしている。
 従来のmaxでは、エッジサブオブジェクトモードでエッジをリムーブすると、空間にバーテックスが残ってしまい、削除に苦労をしたが、このバージョンからは”コントロール+リムーブ”キーを押すことで、バーテックスごとエッジをリムーブできるようになった。

●標準ボーンの機能が強化された
 標準ボーンが、モーションmixやアニメーション移植に対応。以前のCharacter Studio並みになってきた。
 Character Studioが標準搭載された今でも、標準ボーンの愛好者は多く、また、過去のデータ資産を生かすためにも、この機能強化は大きな意味を持つでしょう。

●Character Studioの大幅機能強化
 ”Character Studio”が大幅に機能強化された。
 現在Character Studioはmaxの内部機能のためバージョンを公開していないが、事実上のキャラクタースタジオ5といえる。
 まず、Character Studioの特徴であり、一番の難関でもあった独自アニメーションシステムが廃止され、max標準アニメーションのオイラー関数カーブによる編集が可能になったことがあげられる。
 次いで、指先や末端部の強化が挙げられる。首の間接数や尻尾の間接数も25個までと膨大になり、その上、指のモーションキャプチャデータも、直接取入れが可能になった。
 また、腕や足のひねりを実現する”ツイスト”機能や、異なるレイヤー間でも物を持ったり放したりすることが可能な”レイヤーのリターゲット”機能など、大幅な強化がなされている。

●maxスクリプトデバッガ
 ついにmaxスクリプトデバッガがついた
 これで、スクリプトを執筆する段階で、変数に数字を入れた結果を見ることができる。

●総じて
 max6を踏襲するバージョンアップと言うことで、当初はSIGGRAPHでも小さい扱いだったmax8。しかし、日数が進むにつれ、SIGGRAPH会場でも『実はすごいバージョンアップなんじゃないか?』と噂になり、最終日にはブースは常に混み合った状態となっていました。
 特にアセットマネージメントソフトウェアVaultの搭載は大きく、maxが目指す総合ソフトウェアの道のりが次第に見えてきた感があります。(逆に言うと、なぜ、今までの各社3DCGソフトウェアでは、CADでは当たり前だったこうした管理ソフトウェアが搭載されなかったのかが疑問なところですが(^^;)
 ただ、本体機能で言えば、すでにハイエンド3DCGの世界ではUVWマッピングやキャラクターセットアップ無しでのキャラクターアニメーションといった手法は時代遅れになりつつあり、他のソフトを見ると、その部分でのmaxの機能強化には限界を感じざるを得ないのも事実です。
 特に、キャラクターセットアップに関しては、そもそもはCharacter Studioでmaxが先鞭を付けた手法であるだけに、そこから後退して従前のキャラクター作りと手付けでのモーション制作が並行するやり方にこだわってしまうところには、maxユーザーとして、言い切れないもどかしさを感じます。
 単独のソフトウェアの価値で言えば、max8は絶対に<買い>です。他のソフトをはるか後ろに置き去りにした費用対効果があります。
 ただ、来年のmax9へのバージョンアップには、思い切った変化を強く期待をしたいところです。
 また、Autodeskの方のお話では、『2005年9月6日に例年のマックスユーザー会をやるので、ぜひ参加を!』とのこと。
 max8の情報はまた更新されるようなので、是非、足を運ばれてはいかがでしょうか?





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