日記概略
ザンドラ姫
たまにはオタクらしくアニメの話でも。
恐らく皆さんご存じの「風の谷のナウシカ」ですが、実はこの作品には、90分バージョンの米国公開版「Warriors of the wind」という作品があります。(元々のナウシカは120分なので、随分思い切って縮めたものです)
先日、専門学校のアニメの講義で、こいつを使った比較を行ってみました。
さて。まずこの作品のヒロインは風の谷の「ザンドラ姫」です。
そう、そもそもナウシカがヒロインじゃないんですよね(笑)
で、敵対するのが、「帝国」の元で小国を営む「サリーナ女王」。「帝国」の圧政に反旗を翻した彼女が、「帝国」から「炎の悪魔(Fire Demon)」を奪い、その船が風の谷に墜落するところから物語が始まります。
え? トルメキア王国のクシャナ姫? 誰それ? やだなあ。なんの権限もない姫君が軍隊を動かせるわけ無いじゃないですかあ。
言い忘れましたが、舞台は今から1000年後。文明が今からさらに大きく発展し、その後世界が滅んでからさらに1000年後のナウシカに比べると、結構近い未来ですね。うん。
テレパシー、エンパシー、サイコキネシスなんでもござれの本家ナウシカと異なり、ザンドラ姫は普通の人間ですから、当然超能力なんて使えません。そう、アメリカには、「美少女は超能力を使って良い」なんていう日本アニメのお約束は通用しないのです。
従いまして、そんな怪しいシーンは全部カット。
当然、ナウシカと異なり、オームと会話なんて出来ません。その代りに、ザンドラ姫は、部下の城オジ「アクセル」に随時的確な軍命を下します。
アクセルはザンドラ姫の下すどんな命令にも「イエス・マム!」と素早く答える、なかなかの老兵です。ナウシカの命にいちいち逆らうミトとはえらい違いです。
さらに、その二人を、ザンドラ姫の叔父にあたる王弟「イェパ」が支えます。イェパ叔父さんは自らはただの剣士であるとして、王家をザンドラ姫が継ぐべきと判断していて、常にザンドラをもり立てるのです。正体不明のどこかのユパとはひと味違う、生粋の旅の傭兵です。
ザンドラ姫は、ナウシカと異なる単なる人の身ながら、その判断力と指導力と魅力で、撃墜された飛行機からサリーナ女王を連れて脱出。さらに、敵対していたペジテの王子「マイラー」を説得し、仲間に引き入れます。マイラーはどこかのアスベルと異なってセリフの度に自分の王族の血統を鼻にかける気障な野郎ですが、それでも、ザンドラ姫と共に、「毒のジャングル」の地下に「パラダイス」があることを発見することに成功します。
しかし、王族が滅んだものとして、マイラーの意に反したペジテ市長が、オームの幼生を人質にして、風の谷をオームに襲わせたのです。
折しもその時、風の谷では内乱が勃発。城のヴェテラン兵たちが大活躍をしていましたが、いかんせん多勢に無勢。谷は戦場となり、荒れ果ててしまっていたのです。
サリーナ女王も、ファイアーデーモンを出してオームに対抗しますが、直前まで内戦をしていたこともあり、到底対抗できません。
絶望的な状況の中、ザンドラは、必死にオームの幼生を取り返しますが、ナウシカと異なる単なる人の身。もちろん、子供の頃にオームの幼生を助けたことなんてありません。従って、謎の「らん、らんらららんらんらん」なんて言う音楽も流れなければ、空想上の黄金の草原も現れません。
自らの身を呈して、オームの群れを止めたものの、ザンドラは瀕死の重傷を負います。
みんな誰もがザンドラが死んだと思ったその時。オームの触手の治癒効果で、彼女は復活したのです!
そう、言葉が通じないオームと人とが、互いにわずかながら気持ちを通じ合った瞬間です。
しかし、残念ながら、谷は戦争とオームによって踏み荒らされています。毒のジャングルに沈むのも時間の問題です。
その時、ザンドラと、マイラーが見つけた毒のジャングル地下のパラダイスに、木の芽が生えているシーンが写されます。
そう、まだ彼女らにはフロンティアがあるのです。
……と、こんな作品でした。
映像はまったく「ナウシカ」と同じもの。カットされた部分はあるものの、シーンの順番も変えていません。
しかし、セリフと切り取り編集だけで、これだけ雰囲気を変えられるんですね。
ちなみに、上映時間の関係で90分に縮めたとされていますが、実際見てみると、時間もさることながら、元々のナウシカにあった超能力シーンと、曖昧な軍隊表現が嫌われたのではないかと感じられます。
米国では、美少女だから超能力を使っていいなんて言うお約束もなければ、指揮系統のはっきりしないくたびれた軍隊なんて考えられもしないわけですから。
実際、リアリティで言えば、「Warriors of the Wind」の方が明確に上です。映像として非常にわかりやすいんですよね。
生徒に両作品の違いを説明しながら、日本のアニメが世界ではマニアにしか通用しない理由が、この辺の「お約束」に頼りすぎているところにあることを痛感しました。
もっとも、ナウシカのメインテーマである「反戦」のテーマが消えちゃっているので、まあ、「Warriors of the Wind」を見た宮崎さんが怒ったというのもわからなくもないのですが(^^;
アニメ業界に関わる方で、米国リージョンのDVD再生環境がある方でしたら、一度これを購入されて、見比べてみることをお薦めします。
恐らく皆さんご存じの「風の谷のナウシカ」ですが、実はこの作品には、90分バージョンの米国公開版「Warriors of the wind」という作品があります。(元々のナウシカは120分なので、随分思い切って縮めたものです)
先日、専門学校のアニメの講義で、こいつを使った比較を行ってみました。
さて。まずこの作品のヒロインは風の谷の「ザンドラ姫」です。
そう、そもそもナウシカがヒロインじゃないんですよね(笑)
で、敵対するのが、「帝国」の元で小国を営む「サリーナ女王」。「帝国」の圧政に反旗を翻した彼女が、「帝国」から「炎の悪魔(Fire Demon)」を奪い、その船が風の谷に墜落するところから物語が始まります。
え? トルメキア王国のクシャナ姫? 誰それ? やだなあ。なんの権限もない姫君が軍隊を動かせるわけ無いじゃないですかあ。
言い忘れましたが、舞台は今から1000年後。文明が今からさらに大きく発展し、その後世界が滅んでからさらに1000年後のナウシカに比べると、結構近い未来ですね。うん。
テレパシー、エンパシー、サイコキネシスなんでもござれの本家ナウシカと異なり、ザンドラ姫は普通の人間ですから、当然超能力なんて使えません。そう、アメリカには、「美少女は超能力を使って良い」なんていう日本アニメのお約束は通用しないのです。
従いまして、そんな怪しいシーンは全部カット。
当然、ナウシカと異なり、オームと会話なんて出来ません。その代りに、ザンドラ姫は、部下の城オジ「アクセル」に随時的確な軍命を下します。
アクセルはザンドラ姫の下すどんな命令にも「イエス・マム!」と素早く答える、なかなかの老兵です。ナウシカの命にいちいち逆らうミトとはえらい違いです。
さらに、その二人を、ザンドラ姫の叔父にあたる王弟「イェパ」が支えます。イェパ叔父さんは自らはただの剣士であるとして、王家をザンドラ姫が継ぐべきと判断していて、常にザンドラをもり立てるのです。正体不明のどこかのユパとはひと味違う、生粋の旅の傭兵です。
ザンドラ姫は、ナウシカと異なる単なる人の身ながら、その判断力と指導力と魅力で、撃墜された飛行機からサリーナ女王を連れて脱出。さらに、敵対していたペジテの王子「マイラー」を説得し、仲間に引き入れます。マイラーはどこかのアスベルと異なってセリフの度に自分の王族の血統を鼻にかける気障な野郎ですが、それでも、ザンドラ姫と共に、「毒のジャングル」の地下に「パラダイス」があることを発見することに成功します。
しかし、王族が滅んだものとして、マイラーの意に反したペジテ市長が、オームの幼生を人質にして、風の谷をオームに襲わせたのです。
折しもその時、風の谷では内乱が勃発。城のヴェテラン兵たちが大活躍をしていましたが、いかんせん多勢に無勢。谷は戦場となり、荒れ果ててしまっていたのです。
サリーナ女王も、ファイアーデーモンを出してオームに対抗しますが、直前まで内戦をしていたこともあり、到底対抗できません。
絶望的な状況の中、ザンドラは、必死にオームの幼生を取り返しますが、ナウシカと異なる単なる人の身。もちろん、子供の頃にオームの幼生を助けたことなんてありません。従って、謎の「らん、らんらららんらんらん」なんて言う音楽も流れなければ、空想上の黄金の草原も現れません。
自らの身を呈して、オームの群れを止めたものの、ザンドラは瀕死の重傷を負います。
みんな誰もがザンドラが死んだと思ったその時。オームの触手の治癒効果で、彼女は復活したのです!
そう、言葉が通じないオームと人とが、互いにわずかながら気持ちを通じ合った瞬間です。
しかし、残念ながら、谷は戦争とオームによって踏み荒らされています。毒のジャングルに沈むのも時間の問題です。
その時、ザンドラと、マイラーが見つけた毒のジャングル地下のパラダイスに、木の芽が生えているシーンが写されます。
そう、まだ彼女らにはフロンティアがあるのです。
……と、こんな作品でした。
映像はまったく「ナウシカ」と同じもの。カットされた部分はあるものの、シーンの順番も変えていません。
しかし、セリフと切り取り編集だけで、これだけ雰囲気を変えられるんですね。
ちなみに、上映時間の関係で90分に縮めたとされていますが、実際見てみると、時間もさることながら、元々のナウシカにあった超能力シーンと、曖昧な軍隊表現が嫌われたのではないかと感じられます。
米国では、美少女だから超能力を使っていいなんて言うお約束もなければ、指揮系統のはっきりしないくたびれた軍隊なんて考えられもしないわけですから。
実際、リアリティで言えば、「Warriors of the Wind」の方が明確に上です。映像として非常にわかりやすいんですよね。
生徒に両作品の違いを説明しながら、日本のアニメが世界ではマニアにしか通用しない理由が、この辺の「お約束」に頼りすぎているところにあることを痛感しました。
もっとも、ナウシカのメインテーマである「反戦」のテーマが消えちゃっているので、まあ、「Warriors of the Wind」を見た宮崎さんが怒ったというのもわからなくもないのですが(^^;
アニメ業界に関わる方で、米国リージョンのDVD再生環境がある方でしたら、一度これを購入されて、見比べてみることをお薦めします。